からみ織を手で織る場面を思い浮かべてみてください。糸の状態を見ながら、絡ませたい糸を動かし、緯糸を通す。引っ掛かれば手を添え、張りすぎていれば加減する。一越しごとに確かめながら進められることは、手織りの大きな強みです。
糸の性質を感じ取り、その場で対応する。そうした人の柔軟な動きによって、複雑な絡みも一つひとつ形にできます。手であれば、糸を少し持ち上げたり、動かす順序を変えたりすることで解決できる場面があります。
自動織機で難しいのは、この「その場で少し調整する」という働きを、一越しごとの手の介入に頼らず成立させることです。経糸を交差させ、緯糸を通す空間を開き、緯糸を打ち込み、次の動作へ移る。その一連の動きに合わせて、糸の張り具合も整えておかなければなりません。
からみ織では、糸が緩むこともトラブルにつながります。愛知県産業技術研究所の紙糸を使った研究では、経糸のたるみによって糸が綜絖の間に挟まり、切れる問題が報告されています。糸を強く張れば解決するというものでもなく、素材の性質に応じた条件を探る必要があります。
愛知県産業技術研究所『研究報告2009』130–131頁
工程の一部を機械に委ねる段階から、連続した自動運転へ。人がその都度補う範囲が小さくなるほど、糸の通し方、装置の配置、動作のタイミング、張力の設定に、その調整を織り込む必要が増していきます。自動化の難しさは、人の対応力を、繰り返し成立する仕組みへと置き換えるところにあります。
そして、調整した結果は、一つの織り目だけでなく、生地の幅と長さの全体に現れます。最初の一越しから、その先の何度もの繰り返しまで、繊細な絡みを揃え続ける。その条件をつくり、状態を見守り、必要な手を入れることが、自動織機を扱う人の技術です。
機械が織り続ける一反には、現場で積み重ねられた判断と工夫が息づいています。その知見を人から人へ伝えることが、からみ織の生産を未来へつなぐ力になります。