からみ織は、産業資材のメッシュから、繊細な衣料用生地まで、幅広い用途に使われる技術です。同じ「糸を絡ませる」という仕組みでも、規則的な網目をつくる場合と、複雑な模様や風合いを表現する場合では、織るために整える条件が変わってきます。
その違いを知る手がかりが、からみ綜絖(そうこう)の「複式法」と「単式法」です。綜絖は、経糸の動きを導く道具。からみ織では、隣り合う経糸を交差させるために、専用の綜絖を使います。
名前だけでは複式のほうが難しそうですが、基本的な複式法は、経糸の張力差を抑えやすい仕組みです。上下逆向きに取り付けた二組のからみ綜絖を使い、糸のねじれを取り除きながら織り進めます。産業資材のメッシュのように、規則的な織り目を連続してつくる場面では、こうした安定性が役立ちます。
『テキスタイル&ファッション』Vol.25 No.9(2008)
さらに複雑な絡み方や模様をつくるときに、単式法の自由度が生きてきます。一つのからみ綜絖で複数の糸を絡ませられる一方、糸ごとの織り込み長や張力に差が生じます。糸を送り出す仕組みを分け、たるみを取り、意図しない絡みを防ぐ。表現の幅を広げるために、装置と調整の複雑さを引き受ける必要があります。なお、紗や絽は、単式・複式のどちらでも織ることができます。
「特殊カラミ装置の開発」(2000)
そこに撚糸、特に強い撚りを持つ糸を組み合わせると、考えるべきことはさらに増えます。経糸を絡ませる動きに加え、糸そのものが持つねじりの力や伸縮の性質も、織り上がりに影響するからです。愛知県産業技術研究所の研究でも、撚り数や張力によってねじりの力が変化し、緯糸の曲がり方や布の立体形状を左右することが示されています。
大野博「機能素材組み込みのための立体空間を有するからみ織り技法の開発」(2010)
どこを絡ませ、どこを透かし、糸の撚りをどう生かすか。衣服としての表情を求めるほど、織組織と糸の性質を一緒に扱う技術が必要になります。そして、その表情を、自動織機で安定して再現する。身にまとう布の豊かさは、こうした細かな条件を一つずつ整える仕事から生まれています。