能登・輪島市門前町にある曹洞宗の大本山總持寺祖院

仏殿には、山岡鉄舟が書いた四枚の大きな襖書が残されています。

右から、

鉄樹
枝を抽んじ
石樹
花を開く

「鉄樹、枝を抽んじ、石樹、花を開く」。

文字どおりには、鉄の木から枝が伸び、石の木に花が咲くという意味です。

普通に考えれば、あり得ない光景です。

しかし禅では、その「あり得ない」という判断そのものを問い直します。

私たちは、自分がこれまで見てきたものや知っていることをもとに、「これはこういうものだ」と判断しています。

けれども、いま真実だと思っていることも、その瞬間のもの。次の瞬間には、すでに過去になります。

だからこそ、物事を固定して見ない。

鉄の木に枝が伸び、石の木に花が咲くという表現は、自分の常識だけで世界を決めつけないという禅の考え方を示しています。

山岡鉄舟と禅

山岡鉄舟は、幕末から明治にかけて活躍した幕臣で、江戸城無血開城に至る過程では、西郷隆盛との交渉にもあたりました。

一方で、剣・禅・書に深く取り組んだ人物としても知られています。

その鉄舟が總持寺祖院に残したのが、

「鉄樹枝を抽んじ、石樹花を開く」

という書です。

短い言葉ですが、ものの見方を固定しないという禅の考え方が表れています。